向井邦雄「お客様がずっと通いたくなる極上の接客」
動作の基本は「緩・急・緩」
「動きに緩急をつけなさい」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。
そこに、ある特定の規則性を持たせメリハリのある動きにするのが「緩・急・緩」です。
動きはじめと終わりはゆっくりと、そして間の動きは素早くするのです。
例えば、グラスを移動する場合、最初にグラスを持つ時はゆっくり、宙に浮かせたら素早く目的の場所まで動かして、最後に置く時はまたゆっくりと。
これは、自動車でスピードを出す時のアクセルとブレーキの使い方にも似ています。
大切なのは "絞り込む" こと
もちろん集客だけではなく、内装や店内の装飾品、流す音楽、提供するメニュー、メニューのネーミング、話しかけるタイミングや会計のしかたまで、すべてがイメージに合ったお客様がより喜ばれ、常連様になりやすくなるのです。
お客様を絞り込むということは、「お客様の心に留まりやすくなる」ということと、「店側がお客様をイメージしやすくなる」というふたつの大きなメリットがある、ということをわかっていただけたと思います。
それを踏まえたうえで、あなたがすることはひとつです。
「自分が理想とするお客様に喜ばれる接客とは、どんなものかをとことん追求する」こと。
クレームがなくなる!? 灯台下暗しな接客術
私の経営する店はエステサロンですが、開業当初、客単価は5000円ほどでした。
それが今では2万5000円と、約5倍にまで上がっています。
ここはよく勘違いされがちなのですが、決して値上げをしたのではありません。
値上げをするのではなく、より価値の高いメニューや商品、サービスを提供していくことでお客様の使われる金額が変わり、お客様の層が変わっていったのです。
そう、ここが大事です。
商品がよくなり、全体の価格が上がると共に離れていったお客様も多くいました。
一方で、その価格と商品に価値を感じるお客様が集まってくださったのです。
もちろんオープン当初から通ってくださっているお客様は、今もいます。
それらのお客様も、金額ではなく、メニューやサービスに価値を感じてくださった方なのでしょう。
「金持ちけんかせず」という言葉をご存知でしょうか?
私のサロンのオープン当初、設備も技術も接客も最大限の努力をしているのに、クレームをいって来られたお客様は、たいていある偏った層の方でした。
それは、クーポンなどで安いから試しに来られたお客様。
毎回、値段を気にして、少しでも安いメニューを好むお客様。
「なんで私にはこのサービスがつかないのよ」
「あの人のほうがよいものなんじゃないの?」など、他のお客様よりも少しでも得をしたいという思いが、粗探しからクレームへとつながっていったのでしょう。
しかし、少しずつ単価が上がり、安いメニューがなくなった時点で、これらの方は来られなくなりました。
(中略)
そもそも、半額で来る人や返金目当てで来る人は、本来の価値に見合った定価を定価だとは思っていません。
半額=定価、返金(無料)=定価だと思って来店してくるのです。
その店や商品に価値を感じていない人ですから、満足もしない、不満に感じる、クレームを言うという流れになっていくのでしょう。
お客様の生活レベルを知る
大事なのは、あなたの理想とするお客様が、ふだんどのような店に行き、どのような金銭感覚で生活しているのかをしっかりと理解するということです。
よいものには金額を惜しまず、時間もあり、クレームがない。
もし、そういうお客様を理想のお客様だと思うのなら、そのお客様の生活レベルを知り、そのお客様と同じ価値観になり、同じ判断基準で接することが重要なのです。
そのために、なるべく高級な店や文化に触れ、そこでどのような接客やおもてなしがなされているのか、知っておくことが有効でしょう。
(中略)
「よいものには金額を惜しまず、時間もあり、クレームがない」理想のお客様のことをよく「富裕層」などという呼び方をしますが、富裕層のお客様を増やしていくには、内外装設備やメニューの内容、金額だけではなく、ちょっとしたあなたの思考や言葉が大きな影響を及ぼすということを知っておいてください。
1回目と2回目はまったく違う
多くのサロンから私に寄せられる悩みでいちばん多いのが、「集客の悩み」です。
「新規のお客様が来ないので、なかなか売上が上がらない」
「常連の方はリピートしてくださるのですが、顧客の絶対数が少ない」など。
実は私から見たら、これは大きな勘違いです。
「リピーターの方が多いのに集客に困るわけがない」というのが私の考えです。
もちろん新規客を増やすことはできます。
様々な手法を使えば、あっという間に今の倍、いや10倍にすることも可能でしょう。
でも、大事な部分に気づかなければ、いつまでも同じことを繰り返すだけです。
考えてみてください。
少しずつでも新規のお客様が来られているのに全体の客数が増えないということは、それ以上に常連のお客様が離れてしまっているということです。
もしも常連のお客様が離れることなくずっと通い続けてくださっていれば、どんなに新規の数が少なくても全体の客数が減るわけなどないのです。
そこに気がついていないから、いつまでも新規が少ないと悩み続けることになるのです。
(中略)
まずはお客様が離れていかないように全身全霊を傾けることです。
1回目の来店と二度めの来店で、同じように接していたのではそれは実現しません。
はじめての来店よりも、リピートしてくださることのほうが遥かに奇跡です。
それだけの歓びをもって接しましょう。
人は、同じ事を繰り返すとやがて飽きていきます。
2回目、3回目、同じことを繰り返していたのでは、そのうち飽きて他店に移って行ってしまうことでしょう。
「そういえば昔よく通ってくださっていた○⭕様、最近見かけないな……」などということが、よくあるのではないでしょうか。
1度目よりも2回目、2回目よりも3回目、10回目、100回目。
来られれば来られるほど感動するような接客、毎回驚きと感動に満ちた接客を心がけることこそが、ヤカンのお湯を沸騰させ、熱い上級を吹き出すこと=利益を生み出すことにつながるのです。
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