鍜治真起「数独はなぜ世界でヒットしたか」
鍜治真起、SUDOKUのゴッドファーザー
2007年3月、ニューヨークタイムズ紙の経済面トップを飾った記事のタイトルです。
テーマは数独なんですが、記者が興味を示したのは、数独が日本以外で商標登録されていない点でした。
利益を独占しようと思えばできたのに、それをしない。
- まるで禅の世界だ
- すばらしい失敗
と記者はコメントしています。
それに対して鍜治さんは、「僕にとって最大級の褒め言葉だった」と本書の中で書いています。
この言葉の裏には、どんな思いが込められているのでしょう?
鍜治さんが1980年に立ち上げた「ニコリ」というパズル雑誌に数独が登場し、1988年頃からニコリ読者の間で数独は一番人気でした。
それが世界中でブレイクしたのは2005年。
2003年にニコリのパズルのファンだったウェイン・グールド氏が、数独の問題を自動生成するプログラムを作りました。
そのプログラムを自分のホームページに公開していいかと鍜治さんに質問、鍜治さんは商売利用じゃないならOKと返事をしました。
そこからグールド氏は、プログラム公開と同時にSUDOKUを世界中のメディアに売り込みます。
当然、金はグールド氏に入ります。
本人は純粋に数独を広めたかっただけでしたが、「ビジネス目的では?」と疑うニコリの社員出てきました
しかし鍜治さんは今も昔も、
僕が命名した数独を広めてくれてありがとう
という気持ちしか持っていないそうです。
そして2004年11月、グールド氏はロンドンのタイムズ紙との契約を成立。
2005年1月にはイギリス全土でSUDOKUの大ブームが起こり、その流れは全世界へ波及していきました。
日本以外で商標登録しない理由
SUDOKUという単語はオックスフォードなど辞書に登録されて、一般名詞になってしまっています。
鍜治さんが発案者として商標登録を行おうにも、主要な先進国では受けつけられない状況になってしまっているからです。
今アメリカやヨーロッパで売られている数独本のうち、ニコリの版権をキチンと取得して売られているものはごく一部で、あとは勝手に作って売っているものばかりです。
でも僕は、海外では好きにやってもらってかまわないと考えている。
みんなが商圏を広めてくれたおかげで、僕たちが本家本元としてそのエリアに呼ばれる。
「数独の問題の質はどこにも負けない」という自負もあるから平気なのだ。
また、数独だけではなくて他の種類のパズルももっているので、あとからその商圏に参入しても、いくらでも勝負ができるという自信がある。
- 作者: 鍜治 真起
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2010/03/19
- メディア: 単行本
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