三木一馬「面白ければ何でもあり 発行累計6000万部-とある編集の仕事目録」
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20冊目指して頑張ろう♪
三木一馬「面白ければ何でもあり 発行累計6000万部-とある編集の仕事目録」を読みました。
面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録
- 作者: 三木一馬
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2015/12/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ライトノベルの会社、電撃文庫。
そこの編集者である三木一馬さんの仕事術が載っている本です。
想定読者の『アイツ』に刺せ
作品を書く上で大切なのは、その作品で身近な人を楽しませることだと三木さんは言っています。
アイツだったら、こういう展開にこそ燃えるはず!
アイツだったら、確実にこのヒロインに惚れるな!
という風に。
これはマーケティングでよくある、ペルソナを想定することと同じです。
三木さんは「想定読者」という言葉を使っています。
しかし身近な人が周りにいなかったら……
子供向けの本を書きたいけど、周りに子供の知り合いがいなかったら……
そんな時、どうすればいいのでしよう?
そんな時は、今現在、あるいは過去の『自分』を想定読者にすればいいのです。
そもそも小説を書くという行為は、「自分の本能に従った、『性癖』を暴露してでも伝えたい何か」を文字で具現化するということです。
それならば、自分が想定読者であることになんの矛盾もないはずです。
ポイントは、『いつ頃の自分を想定読者にするか』です。
たとえば「ネトゲ最高!」という作品を書きたいのならば、『いちばんネトゲにハマっていた頃の自分』が想定読者です。
それが今現在であるならば今現在の自分でかまいませんし、高校生の頃なら、『いちばんネトゲにハマっていた高校時代の自分』が想定読者になります。
そして、高校時代の自分がどのようにネトゲを楽しんでいたのか、学校ではどんなことを考えていたのかといった、本来の想定読者について考えるときと同様に、なるべく事細かに思い出していくのです。
すると、「なんであんなことで悩んでいたんだろ。バカみたい」「あぁ、結局好きなあの子に告白できなかったなぁ。今なら絶対告白するのに」というふうに、自分の過去の体験や感情を客観的に見ることができるようになっているばずです。
そうして思い出されたエピソードを、いかに現実世界よりも『面白く』していくかが、創作の腕の見せどころです。
一、二年前ならいざ知らず、五年、一〇年前の自分というのは、もはや別人と定義しても違和感がありません。
過去の自分とは、立派なアイツ-『想定読者』たりうるのです。
ペルソナとして設定するのは、架空の人物ではなく過去の自分でいい。
このやり方だと、「女性やシニア向けの商品はどうやって考えるの?」という問題はありますが、なるほどなーと思いました。
「いいね!」ポイントを見つけ出せ
加点法と減点法。
自分の人生を判断するときや理想の恋人を見つけるとき、商品の批評をするときなど、物事をプラスに考えるのか、それともマイナスに考えるのかで印象はガラリと変わりますよね。
編集者である三木さん、担当作家の原稿を読むときは常に加点法だそうです。
いわゆる「いいね!」ポイントがあるかどうか、そこを重要視します。
三木さんの加点法の仕方を見てみましょう。
作家から初めて上がってきた原稿を『第一稿』と言います。
最終的に原稿が完成することを『脱稿する』と表現し、初稿から脱稿までは、だいたい五~六回修正の打ち合わせを行います。ただし、五~六回すべて同じ読み方をするわけではありません。
第一稿目は、「いいね!」ポイントを探る読み方をします。
面白いフレーズだったり、気持ちいい文章表現だったり、脇キャラの個性的な行動だったり、びっくりするアイディアだったり、意外なストーリー展開だったり……。
自分が「ここは良い!」と思ったポイントを原稿に直接メモしていきます。
これらは、数が多ければ多いほど良いです。なぜなら、『読者』とひとくくりに言っても、その数は何万人、何十万人もいます。
いわば、その読者の数だけ、感じ方の違いや趣味嗜好が異なる「面白いかどうか」の判断がなされているようなものです。ゆえに最初の原稿では、読者のあらゆる「面白いと感じる部分」に対応するため、「いいね!」ポイントをなるべくたくさん常備しておくほうがいいのです。
「この作品には、いくつの宝石が埋まっているのだろうか」
そんなふうに、宝探しをするような感覚で原稿を読んでいきます。
宝探しをする感覚ねえ~。
僕は自分の人生や仕事の仕方を振り返る時は、自然と減点法でジャッジする癖があるので、そこは直していきたいです。
他の人に対しては、褒めることを意識するようにはなりましたが、まだたまに批評精神が出てきてしまいます。
批評よりもまずは褒めること、いいね!ポイントを見つけること。
これは幸せな人生を生きていく上でとても大切な考え方です。
「よくないね……」ポイントの伝え方
話を三木さんの文章に戻すと、すべての原稿が初稿からパーフェクトなわけではありません。
よくない部分もあるのです。
それを三木さんはどうやって改善するのでしょうか。
原稿を読むときは加点法で、第一稿では「いいね!」ポイントを見つける、という話をしました。
といっても、良くない部分をスルーする、ということではありません。
「いいね!」ポイントを重視しつつ、裏では「よくないね……」ポイントもチェックしています。
『裏で』というとちょっと卑怯な印象を受けるかもしれませんが、今は心の中でメモしておいて、あとで言う、という意味です。
見つけた「いいね!」ポイントについては、第一稿目を読んだあとに行う作家との打ち合わせで、バンバン伝えます。
とはいえ、ただ褒めるということではなく、作品の良いところをもっと伸ばすには、もっと面白くするためにはどの「いいね!」を目立たせるか、といったことをメインに話していきます。
その打ち合わせを経た改稿原稿-つまり『第二稿目』が届いたら、今度はチェック項目が三つに分かれます。
・一つ目は『一稿目で相談した「いいね!」ポイントが増えているか、より良くなっているかどうかの確認』
・二つ目は『細かい整合性のチェック』
・三つ目は『伝えなかった「よくないね……」ポイントが自然に消えているかどうかの確認』(中略)
三つ目の『伝えなかった「よくないね……」ポイントが自然に消えているかどうかの確認』ですが、ここであえて言わなかった「よくないね……」ポイントのメモが役立ちます。
一回目の打ち合わせで、「いいね!」ポイントを話しているうちに、気づけば「よくないね……」ポイントが自然と押し出されて消えていることがよくあります。
打ち合わせ時にそう決まるときもあれば、作家が独自改稿で(良い意味で)変えてくるときもあります。
指摘をしないでも「よくないね……」ポイントが消えるほうが、作品にとって『自然に面白くなっていく』ことになりますから、僕はこれを良い傾向と捉えています。
(中略)
そして第三稿目以降では、三つ目のチェック項目がすこし修正されて、『消えなかった「よくないね……」ポイントを真摯な気持ちで伝える』こととなります。
(中略)
こういったやりとりを何度と繰り返し、原稿を完成に近づけていくのです。
「いいね!」ポイント、つまり長所を伸ばすことで、短所である「よくないね……」ポイントが自然と消えていれば成功。
これも言われてみれば確かにその通りですね。
そうなってくると、人は短所改善の努力をするよりも、長所をさらに伸ばす努力をした方がいいってことですね。
人生は加点法。
宝探しをする感覚で「いいね!」ポイントを見つける。
まずはこれを常に意識して、自分や他人をどんどん褒めていきましょう!
面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録
- 作者: 三木一馬
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2015/12/09
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