千田善「オシムのトレーニング」
オシムのトレーニングは頭が疲れる
なぜなら、「2つ以上のことを同時に考え、実行する」能力を養うからです。
例えばウォーミングアップでダイレクトパスの練習をするとき。
普通はパスを渡す相手の名前を呼んでパスを出します。
選手Aが「B!」と呼んでBにパス、のように。
オシム式のトレーニングでは、ダイレクトパスを受ける第3の選手の名前を呼んでパスをします。たとえばAが「C!」と呼んで、Bにパス。
BはワンタッチでCにパス。Cが受け取って一連のアクションは終了。
目前のプレーだけでなくその次のプレーも考えさせるのがオシム式で、身体と頭を同時に使わせるのです。
日本代表選手たちだから「ウォーミングアップとして」簡単にできましたが、ふつうは5回連続でつなぐのも難しいのです。
選手への指示は2つまで
「3つ以上同時に言うと混乱したり忘れたりで、1つしかできないか何もできなくなる」はオシムの言葉。
言葉で説明するのは最小限にして、「難しいことを言わなくとも、やればわかるメニュー」を準備するのがオシムの真骨頂です。
自分たちで解決できる自立したチームに
「判断のスピード」について記者から質問されたオシムは、こう答えています。
問題は、日本人が早く判断する能力を持っているかどうかではなくて、素早く自分で考えることが一般社会で許されているのかどうかだ。
日本人の多くが、監督ー選手や教師ー学生の「上下関係」や先輩後輩の序列を気にして、自分の頭で考える習慣があまりないのではないでしょうか。
日本人は組織的に行動し、規律を守る特性(長所)はあるのだから、選手たちが自分で判断し、自発的に行動する力を養えば、今以上に世界と戦えるはずです。
オシムのトレーニングには、そうした判断力を養う要素が盛り込んであります。
オシムのトレーニング-日本代表監督時代のトレーニングを多数収録!
- 作者: 千田善,イビチャ・オシム
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