福島徹「福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密」
自分がお客様の立ち場になってとことん想像してみる
例えば、地元のメーカーの醤油を棚に並べるとします。
これは希少品で、自分のスーパーにしか置いていないとしたら……。
- この醤油の存在に気づいてもらうため、POPにやや大きめの字で「地元にしかない醤油です」と書いて貼ってみる。
- それで、お客様には「ん、これは何!?」と気づいてもらえる。
- きっとこの商品についてもう少し知りたいと思ってくれる。
- だとしたら、どんな醤油なのか、少し説明を添えたほうがいい。
- どんな情報が欲しいだろうか。この醤油に目がいくということは健康志向の人が多いだろう。そうすると、「身体にも優しい」とか、成分表示を明確に伝えたほうがいいだろう……。
こんな具合に心の中でどんどん想像をふくらませながら考えていきます。
そして、適切だと思う言葉をPOPに書いたり、並べ方を工夫したりします。
気を付けたいのは、決して押し付けがましくならないようにすること。
お客様が商品をえらぶ際の判断材料を正直に伝える。
そこに徹するのがポイントです。
現場に耳を傾けよう。売り場改善のヒントがそこにある!
これは私の失敗です。
立川店は高齢のお客様が多かったので、お惣菜もあまり多すぎては残ってしまう、小さなパックのほうが食べやすいかなと思い、それまでよりも1パックに入れる量を減らし、食べ切りサイズで売るようにしてみました。
そうしたら売上げが激減。
どうしてかと不思議でしかたがなかったのですが、お年寄りだから食べ切りサイズがいいかと思いきや、実はそうではありませんでした。
お年寄りは大きなパックで買って行き、半分食べて、半分は次の日のために冷蔵庫へ入れておくほうが安心で、これまでの生活スタイルなのだとわかりました。
何よりちょっと多めだと、お得感もあるようです。
こうしたことを知ると、売り方もまた変わります。
本当はその日中に食べてほしいのですが、冷蔵庫で保存すれば翌日まで持つように工夫するなども考えられます。
高齢者の方の嗜好を私は何気ない会話の中で知りました。
現場でお客様の様子を見て、声を聞く。
そこから必ずどういう売り場、売り方がいいのかというヒントが見えてきます。
消費者の意識を変えることもスーパーの役割の一環と考える
あるとき、たくさんのしいたけをどうやって使い切るか、という話になりました。
お客様の中に「うちは家族2人だから、そんなにたくさん使い切れない」とおっしゃる方がいらっしゃったのです。
そこで、私はしいたけの保存法をお話ししました。
しいたけは、昔は秋しか採れないものでした。
それを冬の間も利用するため、一度、塩で茹でて、それを容器に詰めて、寒いところで保存します。
今なら冷凍しておけばいいのでしょう。
これを必要なときに鍋に入れたりして食べればいいのです。
あるいは、新聞紙を三重にして、しいたけをくるんでおけば、しばらくは日持ちします。
そんな話を講座ですると、お客様はこちらが驚くほど反応し、しかも買ってくださるのです。
肉に関しても同様です。
松坂肉や神戸牛などのブランド牛は確かに美味しいですが、値段も高いですし、何より食べ過ぎると脂肪分が多いので身体にはちょっと心配です。
それよりも赤身のリブロースのほうがいたって健康的です。
ところが、「リブロースは硬くて」とおっしゃる方もいます。
それなら、リブロースを美味しく食べられるコツを講座で紹介させていただこう、ということになりました。
講座では、牛肉にはどんな栄養があるのか、部位による栄養価の違いはどうなのかなどもちゃんとお伝えしたところ、お客様は納得してくださいました。
知識が蓄積されていくことで、「ふだんはリブロースを食べて、たまには豪勢に松阪牛を食べよう」と言った具合に、お客様は自然と食材の使い分けをされるようになっていきます。
- 作者: 福島徹
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2014/01/17
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