ひかるの読書

ビジネス書を中心に気に入った言葉をご紹介!

細谷正人「Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方」

80冊目到達。えらいえらい(*^^*)
90冊目指して頑張ろう♪

売り場で文脈を感じるストーリー

BACH(バッハ)「ブックディレクター 幅允孝氏の仕事」

東京の伊勢丹新宿店本館の地下2階にある「ピューティアポセカリー」の情報発信ゾーンに、約1000冊の本を並べたブックコーナーを作りました。

ここはナチュラルな化粧品だけでなく、サプリや漢方、有機食品やワインなども扱っており、主に女性のお客様が外面だけでなく内面からも美と健康を考える場所です。

そこで、マクロビオティックのレシピやヨガポーズ集といった実用的な本に加え、女性詩人の詩集や伝記、写真集、小説など女性の心に感じるような本をそろえました。

このほか、女性の書き手による、酒を題材とした連作エッセー集や、ビオ・ワインの造り手ガイドなども置いています。

「酒の本」とすると敬遠されてしまうかもしれませんが、「きれいな酔い方」とすると、読み手の捉え方も変わってきます。

今、日本企業に求められる、本当のブランドストーリーとは

(細谷正人×ナガオカケンメイ

細谷 新しいストーリー創りのベースとして、この本でも「学ぶ」という点を重視しています。生活者も「学ぶ」ことで、新たな発見に気が付くからです。

ナガオカ ものが売れなくなったと言いますが、欲しいものが何となく行き渡ったんでしょうね。しかし、そこで生活者も気が付きました。

例えば、せっかく本物のお椀を買っても、中身のお味噌汁は相変わらずインスタントではだめだと。じゃあ、おいしいお味噌汁を作るにはどうするべきか。そうした点を教える勉強会は、反響がありますね。本当にいい昆布とは何か、ダシの取り方、お味噌汁の作り方などを知り、そのうえでおいしいお味噌汁を飲むための漆のお椀が使える、という状況になるのです。

ものを買うとき、作りてのストーリーとか、産地のストーリーとか、そういう情報をいっぱい受ければ受けるほど、生活者はものに価値を見い出せる。

細谷 自分で味噌を作ろうとか、昆布を取りに行こうとか、生産者に会いに行こうとか、「学ぶ」ことでものに関心を持つのですね。

ナガオカ 伝統工芸士が作った鉄瓶を買いたいと思っていたとしても、鉄瓶を使う生活をしていない家庭では買っても埃をかぶるだけでしょう。そこをお店側が使い方を教えないといけないのです。

以前なら、伝統工芸士が作った鉄瓶であれば、それだけで売れていたかも知れません。今はこの鉄瓶を使った生活そのものに幸せを求めたいから、この鉄瓶。どう使ったらいいのか、この鉄瓶を使いこなすにはどうすべきかを知りたいのだと思います。

創業者こそ、偉大なテザイナーでありマーケッター

ナガオカ 昔は、お酒やお味噌、お米といった商品では、テザイナーがデザインしている例は少なかったと思います。むしろ創業者が自分でデザインしていました。絵心があって、絵筆を走らせる。それが個性になっている。家族の歴史がそのままストーリーになり、パッケージにも反映される。売るときは、そういった話をしながらお客様に手渡していった。

そうしたやり方を、今でもうまく進化させることができればいいのですが、なかなか難しい。伝統の部分は無視しください新しいという理由で、売れ筋の商品と同じようなものを作ってしまうと、せっかくのブランドも、訳が分からなくなってしまう。

昔から続いているものと新しいものをいかに同居させるかは、ブランド戦略の基本ですが、共存のバランスの取り方は難しい。若い経営者だったら、若者向けにしたいでしょう。祖父や祖母の時代じゃない、あんなのは古いと見る経営者もいる。自分がせっかくDNAを受け継ぐのに、先代を打ち消すといった矛盾した行動になる。

(中略)

いろいろな地域に呼ばれて講演するとき、「まずはこの土地で成功しましょうよ」といつも言っています。地元で成功しないで東京で成功しても何の意味もないと言うのですが、なかなか分かってもらえない。お客様のことが見えていないのでしょうか。

細谷 お客様は作り手よりも、はるかに商品について理解していますよ。

それなのに「きっと分からないだろう」という前提で作り手はデザインを考えたり、テレビコマーシャルを作ったりしている。その結果、やり過ぎというか、デザインし過ぎているものが多いと思います。

お客様は生産者の情報をどこまで求めているのか

ナガオカ お客様にお聞きしますと、ソーシャルメディアを参考にしている人が多いようです。他人が撮った写真、つまり発信元じゃない人が発信した情報の方が信頼性があり、安心したり、身近に感じたりするようですね。他人が撮った写真なのに、何か良さそうだと思ってくれる。それだけの情報で、はるばる来るお客様もいる。そうした状況を見ると、かつてのような広告が意味を持たなくなったと言えるかも知れません。

(中略)

知っている人のものを知っている人が買うというのが原則だとしたら、それを実行するのは本当に大変です。店舗の人だって、お客様が誰でどこに住んでいるかまで知らなくてはいけない。でもこれは、日本の昔の商店街に近いんです。本当に安心してものを買いたいなら、ああいうところに戻るのでしょう。

日本人にとっては、昔の商店街が言わば原風景なんです。これが正解ですよ。かつての商店街の姿を体験しているから、それ以外の形態は偽物に見えるのでしょう。だから原風景に戻るしかない。

現在のような新しい販売形態で、お客様から信頼性を得るのは難しい。今の商業ビルなり商業施設は、それにチャレンジしているけど、やっぱりかつての商店街の様子、活気ある商店街の在りようは、絶対にまねできないです。日本人は実は素晴らしい正解を体験しているのに、それを忘れているのではないでしょうか。

Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方

Brand STORY Design ブランドストーリーの創り方