日経デザイン12月号「特集 伝わるプレゼンテーション」
北川一成(GRAPH代表取締役)
ハウステンボス「変なホテル」
「スマート」は変化する
常に「スマート」である
↓
変わり続けることを約束するホテル
↓
変なホテル
ルドンは固有名詞では目を引かない
「ルドンとその周辺ー夢見る世紀末」展の課題は、日本におけるルドンの知名度の低さです。
それを乗り越えるために、余白をたっぷり取ったデザインを提案していますが、普通の展覧会のポスターではまず見かけないですね。
六本木アートナイト2010
六本木アートナイト2010のポスター。
六本木の美術館や複合施設にそぐわないのではないか、とプレゼンでは議論になったという。
狙いは、アートやデザインに興味がない人たちに注目してもらい、安心して来場してもらうこと。
その結果、延べ55万人という目標を上回り、延べ70万人が来場した。
北川さんはプレゼンに際して、スタイリッシュにデザインしたポスターも別案として持参ました。
真逆なもの、検証した案やボツ案を同時に提示して見比べてもらうことで、一押しの案の良さを認識してもらう狙いがあったからです。
細谷正人(バニスター代表取締役)
自らの体験も交え、ユーザーの代弁者として提案
朝日酒造さまには代表的な日本酒のブランドとして「朝日山」という商品があります。
新潟県内では非常に強い商品ですが、県外では知名度が低かった。
さらに最近は日本酒を好む若い人も次第に減ってきている。
そこで朝日山の新シリーズを売り出して新しい市場を開拓しようとしました。
新商品をどうアピールするかということで、我々に声がかかったのです。
既存のパッケージデザインをどこまで変えるべきなのか、朝日山のロゴはどうするのかなど、朝日酒造さまも新商品に対してさまざまな思いがありました。
プレゼンに先立ち、現状の課題を明らかにするためにも朝日酒造さまに状況を聞いたり、アンケートやヒアリングの調査をかけたりしました。
我々もスーパーの売り場でお客さまの行動を徹底的に観察し、日本酒を買うときの意識や基準などを探り出しました。
朝日山のライバルと想定される日本酒も自分たちで体験しました。
ユーザーの視点で、新しい朝日山ではどんな点を訴求すべきかを考えたのです。
こうした我々の行動もプレゼンに盛り込んだうえで、新しい朝日山を訴求するためには、瓶の首部分に紙のPOPをかぶせ、そこに「すーっと」「ふわっと」と飲んだときの味わいや印象を直感的に言葉にした文字を書き込みました。
今までの説明書きは専門的なものが多かった。
そこでブランドが浸透していない地域や売り場で何を買うか悩んでいる人、日本酒の初心者といえる若い人に、新しく日本酒を買うための分かりやすい基準を与えるようにしたのです。
店頭でのお客さまの動きを見ると、実は明確な基準がないために、新商品に手を出しにくいのではと感じたからです。
瓶に紙のPOPをかぶせた日本酒はたくさんありますが、マーケティング戦略を練ったうえで、コミュニケーションワードとして示したことは新しい試みかもしれません。
この提案は朝日酒造さまに採用され、2016年7月に新しい朝日山シリーズが出荷されました。
その後は売り上げも好調に推移しているようです。
懐かしい文具をミニサイズにしてヒット
セブン&アイグループが今年発売した文房具の新ブランド「by LoFt」シリーズ。
20代〜40代の女性を狙う
今回、全国発売するうえで、これら小さいシリーズには11アイテムを投入した。大きさは、使い切りの量とかわいらしさや面白さを一番に考えて決めた。
顧客からは「持ち運びしやすい」「使い勝手がいい」といった声をもらっているという。
by LoFtシリーズでは販売体制も工夫し、セブンイレブン店内ではLoFtのコーポレートカラーである黄色の棚を設置している。
目立つ色なので店内でも目を引いているようだ。
メーンターゲットは20代〜40代の女性だ。
「かわいい」「楽しい」「面白い」といった付加価値が女性にとって魅力的だと考え、グループ各社のMD(マーチャンダイザー)15人で1年半かけて商品開発を行った。
開発途中ではLoFt店頭で顧客の意見を聞き取り調査することも行った。
小さいシリーズの場合、位前から省スペースや持ち運びに便利な商品のニーズがあったという。
ただ、どんな商品にするか、適量サイズはどれくらいかなどを思案していた。
そこで今回、昔からユーザーになじみがある商品を小さくすることで、懐かしさ、見た目のかわいらしさや面白さといった新たな付加価値を備えた商品を、目指していたという。