ひかるの読書

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藤木悠久治「思わず買ってしまう仕掛けの極意 感動する売り場の作り方」

ボリューム感(迫力感・圧迫感)を駆使する

藤木悠久治「思わず買ってしまう仕掛けの極意 感動する売り場の作り方」を読みました。

思わず買ってしまう仕掛けの極意

思わず買ってしまう仕掛けの極意

売り場作りのコンサルタントの藤木さんが、八百屋を例にしてお客様を感動させる手法をまとめた本。

まず表紙のカバーがすごい!
少しわかりにくいんですが、うず高く積まれたキャベツの山!!

中のページには玉ねぎをグワーッと並べた写真があるんですが、それを見るとさすがに笑ってしまいます。
「これはアホだろ」って(笑)

ただインパクトはものすごくありますし、実際にこんな売り場を見たらめっちゃテンション上がるよなーって思います。

じゃあなぜ藤木さんは、こんなアホなこと(誉め言葉です)をするのでしょうか。

私は売り場づくりにおいて、ボリューム感のある陳列をよく使っています。

本書のカバー写真もそのひとつで、これはキャベツを広いサッカー場のグラウンドに見立ててディスプレイしています。

これだけ広いと奥のほうのキャベツには手が届きませんが、そこは問題ではありません。あのボリューム感を出すことが目的だからです。

では、なぜボリューム感を出すのでしょうか?
これまで売り方やPOPなど、お客様を感動させるテクニックを数多く解説してきましたが、ボリューム感もそのひとつです。


全てはお客様を感動させるため。
全てはお客様を楽しませるため。

1つの商品を大量に並べる手法はスーパーだと一般的ですが、藤木さんのそれはスケールが違います。
というかあまりにも違います。

写真についてはぜひこの本を買って、実際に見てもらいたいです。


お客様が必ず買う「絶対値段」

半額ではダメ。
定価の3分の1で、お客様の心はグラッと動く。

商品には、多くのお客様が必要もないのについ買ってしまう価格があります。
私はこれを「絶対値段」と呼んでいます。

絶対値段は、これまでも何度か紹介していますが、競合店が売っている価格の3分の1。
半額でもそれなりに売れますが、3分の1まで値下げすれば、必要としなかった人まで買うので、売り上げは一気に上がります。

たとえば、通常1本100円で売られている缶コーヒーは、2本100円でもそれなりには売れますが、3本100まで下げるとお客様の約2割、一日の平均来店客数が1000人の店であれば200人が買ってくれます。缶コーヒーよりももっと

これも考えさせられました。
中途半端に安くしても、お客様の心を動かすことは難しい。
1割引2割引、それこそ半額なんか色んなスーパーでやってますからね。



「後味」がリピーターをつくる

「前味」はPOPのキャッチコピーや商売のコンセプト。
「中味」は商品それ自体と定義する藤木さん。
それを受けての「後味」は、お客様がもう一度買いたくなる仕組みのことです。

八百屋だけではなく、キャバクラのコンサルもした経験がある藤木さん。
いかにして女の子に「後味」をつけたのでしょうか。

わかりやすいのは、私がかつてキャバクラのコンサルティングをしたときの例でしょう。

その店では、お客様が帰るときに女の子が見送りますが、別れ際に耳元で「今日はどうもありがとう。あなたの匂いがなんとなく好き。また来てくださいね」と言わせるようにしました。

男とは単純な生き物ですから、その一言が強烈な後味として効いてきます。
特に匂いという、自分ではどうすることもできないものにフォーカスしたのもミソです。

実際、そのサービスを始めてから、リピート率や女の子の指名率は大きく改善しました。

「あなたの匂いが好き」

これはねー、わかります。
実際に言われるとすっごい恥ずかしいですけどね(笑)

ホンマでっかTV」でも評論家の方々がよく言ってますが、夫婦間でパートナーの匂いに不快感を感じると、相性があまり良くないという証明になるんだそうです。
それくらい匂いというのは、男女間において重要な要素なんです。

このことが僕の頭にありましたので、先ほどの藤木さんの文章は、「ホント仰るとおりです!」と納得しました。

この「後味」に関しては、キャバクラに限った話ではなく、すべての商売に当てはまる話です。

別れ際にいかに感動させるのか。
どうやったら「また来たい!」と思わせることができるのか。

いっぱい考えないといけませんね。


5勝5敗だとお客様は増える

最後に、この本で一番心に残った文章を紹介します。

ほとんどのお店は、お客様に勝つことばかり考えています。
ここで言う「勝つ」とは、仕入れ値に利益をプラスして売ってお店が損をしないことを指します。

たとえば、椎茸を70円で仕入れたら、店が30円利益を乗せて100円で売るということ。その状態を「店が勝ってお客様が負けた」と私は言っています。

ほとんどの店長や売り場の担当者は、お客様に対して10戦して10勝することを目指します。
仕入れた価格にあらかじめ利益を乗せて売るだけなので、お客様に勝つのは簡単です。

唯一負けるとしたら、鮮度が悪くなって見切り品として売ったケースくらいでしょう。

特に最近は、過去の来店客数や曜日ごとの平均売上高、気温と売り上げの関係といったデータを駆使するこどで、日によって商品が何個くらい売れるかは、ある程度予測できるようになりました。

そのデータをもとに適正数量を仕入れるので、負けることはほとんどなくなっています。

しかし私は、「5勝5敗」を目指してわざと負けるようにしています。
70円で仕入れた椎茸を、あえて69円で売ったりするのです。

(中略)

大切なのは「負け方」。
売れ残った商品を「見切り品」として販売すると、「鮮度がよくないお店」という印象をお客様に与えてしまいます。

このようなときは素直に負けを認め、鮮度がいいうちに値引き販売やまとめ売りなどで安く提供してお客様を勝たせるのです。

つまり同じ負けでもお客様をより楽しませ、喜ばせる方法を考えるわけです。
店が負けてお客様が勝つということは、お客様がそれだけ得をするということです。
それは感動による口コミや熱烈なファンの獲得に繋がります。

お店が負けると短期的には利益が落ちますが、それを補って余りあるメリットが生まれるのです。

商売は、その日一日の勝負ではありません。
明日も明後日もら1週間後も1か月後1年後も続くのですから、目先の利益のためだけに勝つことを追求するのではなく、適度にお客様を勝たせることも必要なのです。

とはいえ、4勝6敗だと店のほうが潰れてしまいます。
お客様にはより喜んでもらえますが、それで店のりえきが圧迫されて潰れてしまっては意味がありません。

バランスとしては5勝5敗くらいがちょうどいいのです。
そうして感動を生み、ファンを増やしていくのです。

10勝ではなく5勝を目指す。
この発想はホントにすごいと思います。
僕の頭の中には全くありませんでした。


藤木さんは値段だけでお客様に奉仕しているのではなく、負けることでお客様が喜んでくれる価格を提げているんですよね。

短期的な目では負けるけど、長期的な目で見ると勝っている……ですか。
なるほどなー。



というわけで、他にも参考になる話(売り込みの極意など)が盛りだくさんなので、ぜひ一度読んでみてください。

そして山積み玉ねぎの破壊力を確認してみてください(*^^*)

思わず買ってしまう仕掛けの極意

思わず買ってしまう仕掛けの極意